インターナショナルウェディングスタイルシュート
皆さん「Styled shoot」ってご存知でしょうか?日本ではスタイルシュートと読まれることがあるようで(正しい読み方ではないけど。Style shoot を発音してるのかな?)。日本語で一番近い意味合いは「作品撮り」でしょうか。
世界のウェディング業界ではよくStyled shoot(便宜上SSと省略記載します)を行い、モックウェディング(疑似ウェディング)の写真を撮影します。通常の仕事ではクライアントの要望に合わせてそれぞれのサービスを提供しますので、必ずしも自身のクリエイティビティを最大限に発揮できるわけではありません。SSでは、そんな普段自由に発揮できない各々のクリエイティビティを最大限に発揮して美しいポートフォリオを作り上げる場なのです。
そして、日本での「作品撮り」と異なる点が、世界的に有名なウェディングマガジンやブログなどにそれらの写真を掲載してもらうこと(有料広告ではなくパブリシティとして、記事で掲載してもらう)を目標として行われることが多いということです。「Style Me Pretty」のような世界的に著名なブログや雑誌等に掲載してもらうことを狙います。世界のウェディング業界ではこれらのメディアの影響力がものすごく大きいのです。このような著名なメディアには世界中のウェディング関係者が掲載を希望して写真を送るので、掲載してもらうのはなかなか難しいのですが。
通常SSはフォトグラファーまたはプランナーの発案で行われることが大多数です。彼ら、彼女たちが「こんなコンセプトで撮影をしたい!」と決めて、その撮影に参加するベンダー(ドレス、ヘアメイク、モデル、フローリスト、アクセサリー等)を集めます。
SSを行うために掛かる費用についてですが、これは少し特殊です。基本的に参加ベンダーは無償で参加します。報酬は発生しません。そのリターンとしてフォトグラファーが撮影した美しい写真を受け取ります。ただ、各参加ベンダーが無償で提供するサービス以外にも諸々の諸経費(撮影の場所代等)が発生します。それらは通常発起人であるフォトグラファーやプランナーが負担します。発案者のやりたいコンセプトに合わせて他の参加ベンダーが各々のクリエイティビティを発揮しながらサービスを提供するので、一番に撮影でベネフィットがあるのは発案者であり、費用を負担するのが通例となっています。
ここでフローリストの立場でのお話です。フローリストも無償で参加しなければいけないのでしょうか?どのベンダーも無償で仕事をするのはわかりますが、フローリストには花材代という莫大な費用が発生します。決して安くありません。
これはケースバイケースであり人によると思いますが、私は花材代を発案者が負担してくれるStyled shootの依頼しか受けていません。花材代を負担しないといけない場合、その対価としてのリターンが釣り合わないと私は感じるからです。ただ、撮影のコンセプトや他の参加ベンダーが魅力的でそこに価値を感じるなら、自分で花材費を負担して参加するのもアリかと思います。あくまで自分がそのSSにどれだけの価値を感じるかで費用負担や参加するかしないか決めていいと思います。
日本での「作品撮り」の場合は花の費用負担ってどうなっているのでしょう。通例、誰が負担するのでしょうか。私は日本での純粋な「作品撮り」の経験がないのでわからないのですが。
そして、今回は私の知る限り日本で初の規模の大きいインターナショナルなベンダーが参加するStyled shootでした。このSSの発案者はシドニーで活躍するスタイリスト、Lilelements のMarie(マリー)。彼女から日本でSSがしたいので一緒にやらないかと依頼が来ました。その時、非常に興奮したのをよく覚えています。「SSの文化が希薄な日本で、初の国際的なSSを一緒に成功させよう!」と意気投合しました。フォトグラファーはフィリピンのair balloon project。ライトでエアリーなウェディングフォトを得意としているフォトグラファーたちです。
そしてマリーと私でSSに向けてコンセプトやカラーパレットの議論、どのベンダーを撮影に誘うかなど色々と相談する日々が始まりました。私は一参加ベンダーというよりも、日本で色んなものを手配したり準備したりとマリーの代わりに日本で動いていたので、割とポジション的に発起人側に近かったかもしれません。このSSでは費用負担をマリーとフォトグラファーでしていました。私は費用負担はしていないですけど、他の日本側での諸々の準備関連の仕事をしていました。
たいていは発案者が決めたコンセプトやカラーパレットに沿って花を作ることが多いですが、マリーは私にカラーパレットについてよく相談してくれました。マリー自身も多少フラワーデザインを手掛けるので、花には旬があり、時期によってできるカラーパレット、難しいカラーパレットがあることを理解しているからだと思います。花に多少理解がある人との仕事はやりやすくて助かります。
花に理解が無い人は、花材の費用負担もせずに無理なカラーパレットを押し付けてきますからね。私は実際の仕事でも、花を理解せず無理難題を押し付けてくる人の依頼は断っています。どんなにお金になってもクライアントも私もハッピーにならない。できるだけ余計なストレスを排除して花をいけたいのです。心模様が花に映し出されるので。負の感情を持って花をいけたら絶対にいいものはできない。
それでは今回のSSの画像をご紹介していきます!マリーが作ったコンセプトが”Ethreal Wabi Sabi”。「優美なわびさび」という感じでしょうか。マリーは日本が大好きなので、日本の文化を取り入れたコンセプトで。あまり西洋のように豪華絢爛な感じではなくどちらかというとシンプルなデコレーションです。
たくさん写真はあるのですが、花に関するところだけピックアップして紹介していきますね。まずはブーケから。
マリーが作成したカラーパレットが、濃いグリーンに臙脂、ペールピンク、ベージュ、ホワイト、そして差し色にブルーといった展開でした。普段あまり濃いグリーンは好んでは使わないので一つそれはチャレンジでした。
ブーケの形状はワイド気味でエアリーに束ねています。この撮影は去年の5月末でしたが、当時の私は多種多様な花材を織り交ぜた複雑なブーケを好んで束ねていたので、当時の私比ではかなり花材の種類も少なく絞りシンプル目なブーケではあります。
モデルさんがロシアの人だったかな?白髪(銀髪?)が美しくファンタジーの世界にいそうな方でした。
ドレスはたくさんの羽が折り重なっているように見える斬新でモダンなデザイン。日本のデザイナーさんのドレスです。
海外ウェディングでは、このような明るめのエアリーでフィルム調の写真が人気です。日本のウェディングの写真はまたテイストが違うんですよね。もっとデジタル寄り。私はフィルム調の雰囲気や質感の方がより好み。
海外のウェディングではよくフラットレイといい、アイテムを平置きで配置して上から写真を撮ります。ウェディングでは様々な拘りのアイテムがあるので、それを美しく写真に収めるのです。
これなんか特にわびさびを感じる写真ですよね。カリグラファーの方が和のテイストを盛り込んでペーパーアイテムを作成しました。
海外のウェディングではフォトグラファーやスタイリストのような人がアイテムをこのように並べて写真を撮ります。日本だと滅多にやっているのを見かけませんが。フラットレイも奥が深く、バランス良くセンス良く並べるには色々とコツがあります。ただ並べればいいわけではないので。
続いてセレモニー装花。挙式スペースの装花のイメージです。こちらはシンプルにスモークツリーのみで仕上げています。使い捨てプラスチックゴミになるフローラルフォームを使わずに。装花周りのスタイリングはマリーです。
よく見るとキャンドルの足元にはチョコンと対のダルマがいます。縁起物ですね!海外から見た日本の見え方って日本人の感覚とやっぱり違うなぁと感じます。やっぱり海外の人が日本的なものというと神社とか着物とかそういったものになってきます。以前パリに住んでいた身としては、一般的に日本人が見る「パリ」もやはりどこかフィルターが掛かっているなぁとは感じます。どこの国でもありますよね。
わびさびが感じられるようにスモークツリーのラインや抜け感を大事にして、葉っぱは極力落としました。
続いてテーブル装花。テーブル装花もごくシンプルに一輪挿しにいけた花を配置して。
食器は和食器を使用しました。
以上、今回のStyled shootからのピックアップ画像でした!最後に参加ベンダー一同で集合写真。
国境を越えて多彩なプロフェッショナルが集まっての撮影でした。発案から撮影まで約半年。準備に膨大な時間と労力を費やしましたが、日本で初の(私の知る限りね)国際的なStyled shootを成功させるために頑張りました。日本のウェディング業界が更に進化していくための小さな一歩だったと思っています。
このSSは”hey WEDDING LADY”という海外のメディアで取り上げられました。
https://heyweddinglady.com/wabi-sabi-wedding-ideas-embrace-beauty-imperfection/
海外のウェディング業界でSSが頻繁に行われる一方日本ではあまり行われない要因の一つとして、ウェディング業界の在り方が関わっているように思います。日本はやはり以前からの業界の慣習が強く、挙式をするときにまず最初に会場を決めてドレスや花屋などは基本的に提携先のものを利用するケースがほとんどだと思います。ドレスは持ち込み可も増えているようですが、花はほとんどの会場が外部持ち込みは不可にしていると思います。
一方海外は会場やドレス屋、花屋などが並列的に独立しています。会場の下請けとしてのドレス屋、花屋があるという枠組みでは無いのです。そして新婦がそれぞれ自由に好みの場所やドレス、花屋を選ぶことができるのです。個人的にはこの海外の慣習の方があるべき姿だと思います。日本の慣習は業界の権益を守るために構築されたものです。決してカップルがステキなウェディングを挙げるためのものではありません。そうやって守りに入り、自由競争がない時代遅れな業界は取り残されていくばかりです。だからいつまでも日本のウェディングがダサいのです。
閉鎖的な業界に未来はありません。ウェディングベンダーも新郎新婦も双方がwin-winになる、未来ある形態に日本のウェディング業界も進化していくことを願っています!
ご協力いただいたベンダーの皆さんありがとうございました!
Stylist – lilelements (@marie_lilelements)
Photographers – Airballoon Project Photography (@airballoonproject)
Calligraphy – Maki Shimano Calligraphy (@mscalligraphy)
Florist – Yuki Yoshikawa (@yuki__yoshikawa)
Fashion + Accessories – Mutin (@mutin_dresstailor)
Makeup/Hair – Anna Oliemans (@annaoliemansmakeup)
Pottery – Hirokazu Furutani (@hirokazu_furutani)
Ring Box + Silk Ribbons – Artiste Saku (@artiste.saku)
Model – Regina (@rigichan)
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